● 近地地震動記録による福岡県西方沖で発生した地震の震源インバージョン

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◎断層面モデルと震源過程のパラメータ化
 2005年3月20日、10:53に発生した福岡県西方沖の地震 (33.739, 130.176, 9.2km; 気象庁)について、K-NET, KiK-netの断層近傍の強震動波形記録記録を用いて、震源過程のインバージョンを行った。
図1に、Hi-netの再検測による本震後約24時間の余震分布とF-netのモーメントテンソル逆解析から推定された震源メカニズム(走向306°、傾斜87°、滑り角17°)及びHi-netのP波の押し引き分布による解(走向108.9°、傾斜89.5°、滑り角-30°)を示した。得られている余震分布の走向は北東-南西で、F-netのモーメントテンソル解の走向と調和的である。インバージョンに使用する断層面は、メカニズムはF-netのモーメントテンソル解を、破壊開始点はHi-netの再検測による震源位置(33.7402, 130.1722, 9.84km)とした。断層面の大きさは余震分布の広がりを参考に、長さ40km、幅20kmとした。
 断層面上のすべり破壊過程は、時間・空間的に離散化して表現されている。空間的には2km四方の小断層200個(20x10)に分けた。時間的には各小断層において破壊開始点から一定速度で広がる同心円が到達してから時間幅1.0秒のスムーズドランプ関数を0.5秒間隔で6つ並べることによって表現した。各小断層からの理論地震波形は、鵜川ほか,(1984)による1次元成層構造モデルを仮定して、離散化波数法(Bouchon、1981)と反射透過係数法(Kennett and Kerry、1979)により点震源の波形を計算し、これに小断層内部の破壊伝播の効果を付加した(Sekiguchi et al.、2002)。
◎解析に用いた波形データ
防災科研K-NET(地上)およびKiK-net(地中5点及び地上1点)の9点(図1)で得られた加速度強震波形に、0.1から1.0Hzのバンドパスフィルターをかけ、積分することにより得られた速度波形のS波部分15秒間を切り出し(S波到達時刻の1秒前から14秒後まで)、データとした。
◎波形インバージョン
 各小断層の各タイムウィンドウのすべり量は、観測記録と理論波形の差の最小二乗法により解いた。インバージョンには、モーメントテンソル解のメカニズムのすべり方向17°から片側45°の幅の中に納める拘束条件(NonNegative Least Square: Lawson and Hanson、1974)と、時間的・空間的に近接したすべりを平滑化する拘束条件をかけている。平滑化の強さは、ABICにより妥当な値を選んだ。第一タイムウィンドウをトリガーする同心円の伝播速度は、観測と合成の波形の残差が小さくなるものを選んだ。
◎結果
図2に推定されたすべり分布とmoment rate functionsを、図3に観測波形と合成波形の比較を、図4に断層破壊過程をそれぞれ示す。インバージョンにより得られた最大滑りは2.7mであり、断層面全体での地震モーメントMoは1.4 x 10**19 Nm; (Mw = 6.7)である。滑りの大きな部分は、余震が多く分布する領域とほぼ重なる。最適モデルを与える断層破壊モデルの「第一タイムウィンドウをトリガーする同心円の伝播速度」は2.6km/sであり、震源付近のS波速度のおよそ7割である。
 破壊は開始点から南東すなわち福岡市街に向かって浅い方向に伝播し、最大アスペリティの位置は破壊開始点の南東、玄界島付近の深さ約2-10km付近に推定された。玄界島では地震による多くの被害が報告されており、アスペリティからの距離が近いことに加え破壊のフォワードディレクティビティの効果により、非常に強い地震動に見舞われたことが示唆される。図4の断層破壊の進展を見ると、破壊開始直後数秒間は小規模の破壊で推移し約3秒後に破壊開始点の東側のアスペリティの破壊へ転じている。このことは、最初に小振幅の波が数秒続きそのあと振幅の大きな波が続くという特徴が、多くの観測波形に見られることと整合する。このような数秒間の初期破壊の後に主破壊へ転じるという特徴は他の地震、例えば、2000年鳥取県西部地震の震源過程の解析結果においても報告されている。