作成日:2017/09/26 15:00
2005年08月16日 宮城県沖の地震による強震動
2005年08月16日11時46分頃に宮城県沖を震源(深さ42km、マグニチュード7.2、気象庁)とする地震が発生し、宮城県の川崎町で震度6弱、仙台市、石巻市などで震度5強を観測しました(気象庁発表)。防災科研は日本全国を対象とした強震観測網であるK-NET・KiK-netを運用しており、この地震についても、K-NET、 KiK-netでそれぞれ456点、391点、合計847点の強震記録をインターネット上で公開しています。以下では、これらの観測データから明らかになった強震動分布図を掲載いたします。なお、K-NET・KiK-netで記録された最大加速度は
MYG004(K-NET築館)観測点の564gal(三成分合成値)でした。
最大加速度・最大速度分布
距離減衰式との比較

[解説] 最大加速度及び最大速度の観測値と距離減衰式(司・翠川、1999)との比較。観測値の方がわずかに大きめの傾向が見られる。
加速度応答スペクトル分布
[解説] 加速度応答スペクトル(減衰5%)の分布。人間が感じやすい比較的短周期の成分(0.5秒)では、最大加速度や最大速度の分布と同様の傾向が見られる。一方、高層ビルなどの大きな構造物が影響を受ける長周期の成分(10秒)では、関東地方や新潟地方などの平野部において周辺地域よりも大きくなっている。
強震記録に見られる二つのパルス
[解説] K-NET牡鹿観測点とK-NET北上観測点の強震動波形。地動速度に変換し、0.1Hz~10Hzのバンドバスフィルタ処理をしている。記録には二つの明瞭なパルスがみられ、二つのアスペリティ(強震動の生成源となる領域)の存在が示唆される。パルスの振幅比は観測点によって変化し、二つのアスペリティが空間的に離れている可能性を示す。
K-NET観測点の最大加速度・最大速度
[解説] 水平成分のどちらかが100gal以上を記録したK-NET観測点の強震記録について、各種成分の最大加速度と最大速度を求めた。最大加速度は基線補正後の値である。最大速度は基線補正後の記録を台形積分により速度変換した後、カットオフ0.1Hz、2次のバタワースローカットフィルタ処理を施している。水平動は南北動、東西動のベクトル合成値、三成分は、南北動、東西動、上下動のベクトル合成値を表す。最大加速度はMYG004(築館)観測点の564gal(三成分合成値)である。最大加速度で見る限りは、複数の観測点で1000gal以上となった
2003年5月26日の宮城県北部沖の地震(M7.1、深さ72km)時の強震動より低いレベルと言える。
K-NET築館(MYG004)観測点の強震動波形

・K-NET・KiK-net観測点の中で最大加速度(564gal、三成分合成値)を記録したK-NET築館(MYG004)観測点の強震動波形。
K-NET築館(MYG004)観測点の速度・加速度応答スペクトル

・K-NET・KiK-net観測点の中で最大加速度(564gal、三成分合成値)を記録したK-NET築館(MYG004)観測点の速度・加速度応答スペクトル。
リアルタイム震度上位10件

・MYG004(K-NET築館)/FKS001(K-NET相馬)/MYGH11(KiK-net河北)/MYG012(K-NET塩竈)/MYG002(K-NET歌津)/IWTH02(KiK-net玉山)/MYGH10(KiK-net山元)/MYG011(K-NET牡鹿)/MYG008(K-NET北上)/MYG003(K-NET東和)
・リアルタイム震度は防災科研方式[功刀・他(2008)]により計算しています。
観測点最大加速度上位10件
・最大加速度は三成分合成値です。
参考文献:
・功刀 卓・青井 真・中村洋光・藤原広行・森川信之, 2008, 震度のリアルタイム演算法, 地震2, 60, 243-252.