● 近地地震動記録による平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震の震源インバージョン(暫定版)

(2008/06/26)
◎断層面モデルと震源過程のパラメータ化
2008年6月14日、8:43に発生した平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震(39.0度, 140.9度, 深さ8km; 気象庁)について、K-NET, KiK-netの断層近傍の強震動波形記録を用いて、震源過程のインバージョンを行った。
図1に、Hi-netの再検測による本震後約12時間の余震分布とF-netのモーメントテンソル逆解析から推定された震源メカニズム(走向209°、傾斜51°、滑り角104°)及びHi-netのP波の押し引き分布による解(走向213.9°、傾斜51.6°)を示した。得られている余震分布の走向は北東-南西で、F-netのモーメントテンソル解の走向と調和的である。インバージョンに使用する断層面は、メカニズムはF-netのモーメントテンソル解を、破壊開始点はHi-netの再検測による震源位置(39.03158N, 140.88362E, 深さ8.13km)、大きさは余震分布の広がりを参考に、長さ42km、幅20kmとした(図1に示した長方形)。
インバージョン解析において断層面上のすべり破壊過程は、時間・空間的に離散化して表現されている。空間的には2km四方の小断層210個(21x10)に分けた。時間的には各小断層において破壊開始点から一定速度で広がる同心円が到達してから時間幅1.0秒のスムーズドランプ関数を0.5秒間隔で6つ並べることによって表現した。各小断層からの理論地震波形は、各観測点ごとに異なる地下構造を考慮した1次元成層構造モデルを仮定して、離散化波数法(Bouchon、1981)と反射透過係数法(Kennett and Kerry、1979)により点震源の波形を計算し、これに小断層内部の破壊伝播の効果を付加した(Sekiguchi et al.、2002)。
◎解析に用いた波形データ
防災科研K-NETおよびKiK-net(地中)の11観測点(図1)で得られた加速度強震波形に、0.1から1.0Hzのバンドパスフィルターをかけ、積分することにより得られた速度波形のS波部分16秒間を切り出し(S波到達時刻の1秒前から15秒後まで)、データとした。
◎波形インバージョン
各小断層の各タイムウィンドウのすべり量は、観測記録と理論波形の差の最小二乗法により解いた。インバージョンには、すべりの方向をモーメントテンソル解のメカニズムのすべり方向104°から片側45°の幅の中に納める拘束条件(NonNegative Least Square: Lawson and Hanson、1974)と、時間的・空間的に近接したすべりを平滑化する拘束条件をかけている。第一タイムウィンドウをトリガーする同心円の伝播速度Vrは2000 m/sとした。平滑化の強さやVrに関しては今後検討する予定である。
◎結果
図2に推定されたすべり分布を、図3に観測波形と合成波形の比較を示す。断層面全体での地震モーメントMoは4.11 x 10**19 Nm (Mw = 7.0)である。すべりは、主に破壊開始点の南側の浅い方に進展した。K-NETやKiK-netのPGAやPGVでは地震動が大きな領域は断層域の南東に広がっているが、その理由として、奥羽山脈に比べ軟弱な地盤条件の仙台平野における増幅効果と、破壊が南東に進展したことによるディレクティビティー効果の相乗効果である可能性がある。

注:なお、本解析は暫定的なものであり、今後修正される可能性がある。

(文責:鈴木亘・青井真(防災科研)・関口春子(産総研))

インバージョン解析により得られたすべり分布の地表投影。星印は破壊開始点を示す。黒丸は、解析に用いた観測点。