● 平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震にともなう断層直上の強震動記録による永久変位の推定

(2008/06/18版はこちら
(2008/06/19改訂)
 2008年6月14日、8:43に発生した平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震(39.0度, 130.9度, 深さ8km; 気象庁)の際に断層直上で記録された強震波形を用い、地震に伴って生じたと考えられる永久変位の大きさを推定した。
◎解析に用いた波形データ
 この地震は逆断層タイプであるため、断層上盤は隆起したと考えられる。防災科研の強震観測網KiK-netの観測点のなかで、断層直上に位置するIWTH25(一関西)(地図はこちら)では、地上に設置した加速度計で3成分合成最大加速度4022galという大加速度を記録した(詳しくはこちら)。ここでは、地中(深度260m)及び地表に設置した加速度型強震計で記録された記録に、基線補正を施しながら2回積分することで変位の時系列を推定し、地震に伴う永久変位を求めた。従来よりこのような解析は行われてきたが、昨年度末に終了した機器更新により導入したKiK-net06型強震計で採用されている加速度センサーは特に長周期成分の測定精度が高く、また、従来は観測記録に見られた「トビ」がきわめて少ないため、精度高く変位波形を推定することが出来た。
◎結果
 下図に赤線で、地表記録から本解析により得られた変位波形を示す。地震波到来(概ね8:43:46)から十数秒で各成分とも一定値に達している。上方向(隆起)の永久変位が最も大きく、約140cmであった。また、水平方向の永久変位は、北方向に44cm、東方向に45cmであり、水平2成分の合成は、63cmであった。なお、3成分合成の永久変位は153cmであった。上下方向の変位は、地震波到来から単調に増加しつづけ約9秒後に最大隆起量である163cmに達し、その後若干沈降に転じ、永久変位量である140cmに収束した。このことからも、断層直上では上方向に突き上げるような地震動であったことが裏付けられた。
 同様の解析を地中記録を用いて解析した結果を下図に青色点線で示した。推定された永久変位は東方向、北方向、上方向にそれぞれ28cm, 60cm 112cmであった。永久変位の水平2成分及び3成分合成はそれぞれ66cm、130cmであった。
 地中及び地表の記録から推定された変位の時間履歴及びその収束値は完全には一致しないものの比較的類似したものであることから、変位は正しく推定出来ていると考えられ、また、地表付近の地盤変状などの現象を捉えたものでないことが分かる。ただし、表層付近の変形等がなければ両者はほぼ一致すると考えられるが、実際には、(1)地表の隆起量の方が28cm大きい、(2)地表の永久変位がN46E方向を向いているのに対し地中がN25E、の二点が異っている。その違いが原因今後検討を要する。

注:なお、本解析は暫定的なものであり、今後修正される可能性がある。

(文責:青井真(防災科研))

防災科研の強震観測網KiK-netの観測点のIWTH25(一関西)で記録された加速度記録を基線補正を施しながら2回積分して得られた変位波形(地表のみの図はこちら)。