前ページ次ページ

3.3 地震動の簡単な性質


図3.3-1 地震動とマグニチュード距離との関係



図3.3-2 豆腐と煉瓦の揺れのちがい



写真3.3-1 野島断層の真上でも壊れなかった家 [サンデー毎日臨時増刊 1995年2月4日号、毎日新聞社による]




図3.3-3 兵庫県南部地震で観測された最大加速度と距離減衰式との比較.横軸は断層面からの最短距離.実線は距離減衰式[福島・田中(1992)による].波線は距離減衰式の標準偏差[Fukushima and Irikura(1999)による]

 地震と地震動の違いの所でお話したように、われわれが感じているのは地震動である。気象庁は地震のマグニチュードと各地の震度を発表するが、マグニチュードとは地震の規模を表し、震度は各地の地震動強さを示す。たとえマグニチュードが大きくても、地震の震源から離れていれば震度は小さい、すなわち地震動は弱い。逆にマグニチュードが大きくなくても、震源に近づけば地震動は強い。これが地震動の最も基本的な性質である(図3.3-1)。

 次に観測点が軟らかい地盤の上にあるか、固い地盤の上にあるかで、大きく地震動がちがってくる。想像してみて欲しい、軟らかい豆腐と、固い煉瓦を揺すったとき、どっちが大きく揺れるか?当然豆腐の方が大きく揺れる(図3.3-2)。

 ところが後で説明するように、地盤が崩れるような強い地震動のときは、非線型性領域に入ったと言い、逆に軟らかい地盤で地震動が弱まる現象も生じる。 地震が断層で発生することは兵庫県南部地震後、一般の人々にも認識されるようになってきた。すなわち、地震のエネルギーは一点から発生するのではなく、広い断層面上に分布しているものである。したがって断層直上でも建物が壊れずに残っている場合も見受けられる(写真3.3-1)。

 一方、断層は現われないものの神戸市街のように壊滅的な被害を被ることもある。地震は自然現象であるので、断層面の中にも強いエネルギーを出した場所、ほとんどエネルギーを出さなかった場所、まちまちであることが想像できよう。

断層にどんどん近づくと地震動はどうなるか?定説は定まってはいないのが現状ではあるが、ここでは断層近傍の地震動のばらつきを統計的に扱う。このばらつきは非常に大きいことが予想されるが、地震動の平均的性質を理解するには統計的処理が有用である。一例を示そう。図3.3-3の横軸は断層からの距離、縦軸は最大加速度である。点は1995年兵庫県南部地震で観測されたデータである。図中の実線は遡ること5年前、1990年に発表された距離減衰式(Fukushima and Tanaka, 1990)である。点線は式の標準偏差である。実線はデータのほぼ中央を通っており、平均的特性をよく予測できていることが分かる。もちろんデータのばらつきは大きいが、断層に近づいても限りなく大きくなるのではなく、平均値のレベルが頭打ちになるように見える(Irikura and Fukushima, 1995)。




◇◇◇



前ページ次ページ