8.4.2 長周期構造物用の震度計 | ||
図8.4.2-1 エレベータ協会の震度計[村松(1987);小野田ほか(1986)]
|
現行の気象庁計測震度および新震度階級の適用限界は周期2秒以下の地震動についてであり、周期2秒以上の地震動によって被害を受け易い構造物については新たな震度階級を作らねばならない。超高層ビルのエレベータ用震度計は屋上に設置され、注目すべき周期は5秒となる。1984年長野県西部地震の振幅は15cmであり、ほとんどのビルで同じ被害を受けたので、この時のビル屋上の震度を表8.3.1-1の抽象的表現に基づいて6とする。この時の振幅は10cmと推定された。震度に対する物理量として、この場合には変位を採用してもよいが、エレベータ協会では変位と速度の積を採用して、図8.4.2-1に示すような震度階級をつくり、震度4になっとたき、エレベータを徐行して最寄りの階に停止する方式とした。 新潟における大型石油タンクは1964年新潟地震では大きな被害を受け、1987年日本海中部地震でも大揺れによって石油の溢れるものがでた。前者の震度は6、地動は近くの加速度記録から約10秒、160galと求まり、後者は震度5で振幅は新潟気象台の記録から、約10秒、10cmと求められた(工藤,1984)。こららの値を図8.4.2-1に記入するとほぼ妥当な値となっている。 図8.4.2-1には前に述べた気象庁震度階級の簡易グラフ図8.3.2-1(b)を並ベて示した。気象庁計測震度の解説に「固有周期が2秒を超える構造物は別に扱わねばならない」と述べられている問題の一例となるからである。長周期の構造物が増加しているので、それらを対象とした別の計測震度が色々と必要になるであろう。その場合、震度5は被害の始まる地震動に対応するという抽象的表現は日本人には馴染み深く、エレベータ制御用のこの震度階級はその自然な活用例である。
|