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6.3.3 活断層調査の今後の課題

                           
 すでに述べたように、仮に理想的なトレンチ調査が行われたとしても、次ぎの大地震の発生時期を決定論的に予測することは困難である。現状では、地震発生時期の予測は確率的なものとならざるを得ない。

 地震調査研究推進本部では、ばらつきとあいまいさをもったデータに基づく統計的な予測手法を開発し、主要な活断層に適用する試みに着手している。近い将来、幾つかの活断層について、次ぎの大地震発生の確率予測が公表されることになるだろう。

 地震発生確率は、すでに国民生活に定着している降水確率と、原理的には類似のものである。しかし、住民の生命・財産に直接関わる情報として、降水確率とは比較にならない重い意味をもつ。予測結果の受けとめ方について、社会全体の共通の理解を作り上げて行く必要がある。

 これまでの活断層調査は、地質・地形学的な方法を中心に進められ、数々の成果を収めてきた。一方、近年では、物理学的な手法も活断層調査に取り入れられつつある。人工振動源を用いた地下構造の反射探査、電磁気的方法による地下の比抵抗探査などである。これらの方法によって、地表付近の調査では到達困難な、活断層深部の構造が明らかになりつつある。

 今後必要なのは、地質・地形学的な方法と物理学的な方法を結合して、活断層の全体像を明らかにして行く努力である。一方で、GPS観測網などのデータから、活断層深部でのゆっくりした断層すべりを捕らえることも可能になるかもしれない。このような調査研究を通じて、大地震の準備過程を明らかにすることが当面の最重要課題である。これに成功を収めるならば、大地震のより的確な発生予測に向けて、新たな一歩を踏み出すことになるだろう。


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