4.1.2 地震の波形(その1) | ||
図4.1.2-1 東北大学の津山観測点(宮城県)で観測された地震波形記録:(a)近地で起きたM=4.1の地震,(b)1999年台湾集集地震(M=7.6) |
図4.1.2-1に地震の波形記録を2つ例示する。いずれも、広帯域地震計の記録にフィルター処理を加えて見やすくしたもので、縦軸は速度振幅になっている。上から順に、東西動、南北動、上下動の記録で、図の上方向が地動の東、北、上である。時間のスケールは、(a)では1刻み1秒、(b)では1刻み1分となっている。 図4.1.2-1(a)は、震源距離100km弱で起きた、深さ45km、M=4.1の地震の記録である。波形は比較的に単純で、P波とS波(正確には直達P、S波)の到着を明瞭に読み取ることができる。この図からも分かるように、一般にP波よりS波の方が大振幅となる。また、P波は上下動で、S波は水平動で振幅が大きく、その到着が明瞭である。 P波初動の立ちあがり方向を見ると、東・北・下となっている。つまり、P波の初動は引き波で、北東方向から入射してきたことになる。従って、震源は観測点の北東方向である。また、S-P時間から震源距離が80km程度と概算される(3.3.2参照)。このように、たった1点の記録からでも、震源のおおよその位置を推定することができる。 P波、S波ともに、その後に長時間振動が続いている。これを地震波の「コーダ」(尾部)と呼ぶ。コーダは主に、地震波の散乱によるものである。散乱は、地球内部が不均質なために生じる。遠方で散乱された波は長い距離を通過してくるので、観測点への到着が直達波よりも遅れる結果となる。逆に、コーダ波の性質から、地球内部の不均質性を調べることができる。これについては第II部に詳しい解説がある。
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