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第I部:地震の基礎知識

第1章 地球の構造とプレートの運動

1.1 地球の構造



1.1.1  地球の球殻構造



図1.1.1-1 地球の内部構造

[科学技術庁(1996)による]


 地球は、半径約6370kmの巨大な球である。より正確には、極方向と比べて赤道方向の半径が300分の1ほど長く、南北方向につぶれた回転楕円体に近い形をしている。しかし、この長さの違いは、直径30cmの地球儀上でわずか1mmに過ぎず、ほぼ完全な球と言ってさしつかえない。

 地球の中心では、温度約6000℃、圧力約360万気圧と推定されている。このような高温・高圧の世界には、将来とも、人間はおろか観測計器すら到達することは不可能であろう。その意味で、地球の深部は永遠のフロンティアと言ってよい。しかし、この接近不可能な地球内部も、地震波の解析などから一歩一歩その構造が明らかになってきた。私たちが光という電磁波を使って物を見るのと同じように、地震波を使って地球の内部を「見る」ことができるのである。人間の目に当たるのが地震計である。

 地球の内部は、図1.1.1-1のように、内核、外核、マントル、地殻の4つの層に分かれている。内核は固体で、ほぼ純粋な鉄からなると考えられている。外核は鉄を主成分とする液体である。このことは、地震波のうち、P波は通過するがS波は通過しないことから明らかになった。この外核を占める液体の運動によって磁場が生じ、そのお陰で、地球上の生物は太陽から吹きつける太陽風から守られている。外核を取り巻くマントルは、地球の全体積の83%を占める。その外側を薄く覆う地球の最表層が地殻である。

 このような球殻構造は、地球の成長の歴史を通じてかたち造られてきたものである。重いものが地球の中心に向かって沈み、軽いものが地表に向かって浮かび上がる物質の分化作用は、いまも地球の内部で進行している。


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