近地強震記録を用いた2011年03月11日東北地方太平洋沖地震の震源インバージョン解析(2011/08/12改訂版)

はじめに

2011年03月11日14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震(M9.0; 気象庁)について、強震波形記録を用いた震源インバージョン解析を行った。

データ

図1に示す防災科研のK-NET地表観測点10点、KiK-net地中観測点26点、合計36観測点の強震記録を解析に用いた。 観測された加速度波形記録に0.01~0.125Hzのバンドパスフィルタをかけ積分して速度波形を得た。 この速度波形を1Hzにリサンプリングして、S波到達10秒前から観測点ごとのデータ記録長とS/N比に基づき225~280秒間を切り出し解析データとした。

断層面の設定と断層破壊過程のモデル化

走向195度、傾斜13度の断層面を設定し、走向方向の長さは510km、傾斜方向の幅は210kmとした。 破壊開始点はHi-netおよび気象庁震源に基づき北緯38.10度、東経142.85度、深さ24kmにおいた。
本解析ではマルチタイムウィンドウ線型波形インバージョン法(Olson and Apsel, 1982; Hartzell and Heaton, 1983)に基づき、断層破壊過程を時空間的に離散化した。 空間的には、断層面を長さ30km、幅30kmの小断層で、走向方向17個、傾斜方向7個に分割した。 時間的には、各小断層でのすべり時間関数を、破壊開始点から一定速度Vrで広がる同心円が到達した時刻から、6秒幅のスムーズドランプ関数を3秒ずらして25個並べることにより表現した。 これにより、各小断層からの要素波形(グリーン関数)を通じて、断層破壊過程と各観測点での波形は線型の方程式で結び付けられる。
各小断層からの要素波形は、一次元地下構造モデルを仮定し、離散化波数積分法(Bouchon, 1981)と 反射・透過係数行列法(Kennett and Kerry, 1979)により点震源の波形を計算 し、小断層内部の破壊伝播の効果(Sekiguchi et al., 2002)を付加して求めた。 地下構造モデルは、藤原・他(2009)による三次元地下構造モデルの各観測点直下の情報を用いて観測点ごとに構築した。 KiK-net観測点については速度検層の情報も利用した。

波形インバージョン解析

各小断層の各タイムウィンドウでのすべり量を、観測波形と合成波形の差を最小とするように、最小二乗法を用いて求めた。 不等式拘束条件をつけた最小二乗法(Lawson and Hanson, 1974)を用いて、各小断層でのすべり方向の変化を、90度の±45度に収めた。 また時空間的に近接するすべりを平滑化する拘束条件(Sekiguchi et al., 2000)を付加した。

結果

図2に最終すべり分布を示す。 図3に観測波形と合成波形の比較を示す。 図4に断層破壊の時間進展過程を示す。 Vrは3.2km/s、最大すべり量は48m、断層面全体での地震モーメントは4.42×1022Nm(Mw9.0)である。

最終すべり分布は比較的単純な様相を呈し、1つのすべりの大きい領域が宮城県沖の破壊開始点周辺から、岩手県南部から福島県北部にかけての沖合の海溝軸に沿う断層面浅部に広がる。 この浅部のすべり領域では、破壊開始の60-100秒後に大きなすべりが生じた。 断層面深部の陸に近い領域でのすべりは比較的小さいが、宮城県沖では海溝軸から陸に近い領域まで5m以上のすべりが推定された。 宮城県沖の破壊開始点から陸にかけての領域では、陸寄りの深い領域に進展する2回の破壊が、20-50秒後と60-100秒後に生じた。 100秒後以降は、福島県から茨城県沖の断層面南部の領域に破壊が進展した。 岩手県、宮城県、福島県沖合の断層の浅い領域で大きなすべりが生じたことにより、これらの地域を襲った大津波が生じた可能性がある。

fig5

(文責:鈴木亘、青井真(防災科学技術研究所)、関口春子(京都大学防災研究所))

2011/4/12に改訂した以前の震源モデルはこちらです。

fig1

図1:解析に用いた観測点と断層面の地表投影を示した地図。赤い三角がK-NET地表観測点、青い三角がKiK-net地中観測点を示す。 薄い黒丸は本震発生後1日以内に発生した地震の震央を示す。

fig2

図2:推定された最終すべり分布。ベクトルは上盤のすべり方向とすべり量を示している。

fig3

図3:観測波形(黒線)と合成波形(赤線)の比較。波形の右上にそれぞれの最大値(cm/s)を示す。

fig4

図4:破壊の時間進展過程。10秒ごとのすべり分布を示している。