近地強震記録を用い2015年5月13日 宮城県沖で発生した地震の震源インバージョン解析(2017/2/28改訂版)

はじめに

2015年5月13日6時13分に宮城県沖で発生した地震(Mj6.8; 気象庁)について、強震波形記録を用いた震源インバージョン解析を行った。

データ

図1に示す防災科学技術研究所のK-NET地表観測点6点、KiK-net地中観測点11点の計17観測点での強震加速度波形記録を積分して得た速度波形とF-netの1観測点での強震速度波形記録を用いた。 これらの速度波形に0.1-1.0Hzのバンドパスフィルタをかけ、5Hzにリサンプリングし、S波到達1秒前から15秒間を切り出し解析データとした。

断層面の設定と断層破壊過程のモデル化

F-netのモーメントテンソル逆解析の結果から走向177度、傾斜25度の断層面を設定し、走向方向の長さは26km、傾斜方向の幅は28kmとした。 破壊開始点は、気象庁震源に基づき、北緯38.86度、東経142.15度、深さ46 kmにおいた。
本解析ではマルチタイムウィンドウ線型波形インバージョン法(Olson and Apsel, 1982; Hartzell and Heaton, 1983)に基づき、断層破壊過程を時空間的に離散化した。 空間的には、断層面を長さ2km、幅2kmの小断層で、走向方向13個、傾斜方向14個に分割した。 時間的には、各小断層でのすべり時間関数を、破壊開始点から一定速度Vftwで広がる同心円が到達した時刻から、0.8秒幅のスムーズドランプ関数を0.4秒ずらして7個並べることにより表現した。 これにより、各小断層からの要素波形(グリーン関数)を通じて、断層破壊過程と各観測点での波形は線型の方程式で結び付けられる。
各小断層からの要素波形は、一次元地下構造モデルを仮定し、離散化波数積分法(Bouchon, 1981)と反射・透過係数行列法(Kennett and Kerry, 1979)により点震源の波形を計算し、小断層内部の破壊伝播の効果をSekiguchi et al. (2002)によって付加して求めた。 地下構造モデルは、藤原・他(2009)による三次元地下構造モデルの各観測点直下の情報を用いて観測点ごとに構築した。 KiK-net観測点については速度検層の情報も利用した。

波形インバージョン解析

各小断層の各タイムウィンドウでのすべり量を、観測波形と合成波形の差を最小とするように、最小二乗法を用いて求めた。 不等式拘束条件をつけた最小二乗法(Lawson and Hanson, 1974)を用いて、各小断層でのすべり方向の変化を、F-netメカニズム解のすべり角である64度の±45度に収めた。 また時空間的に近接するすべりを平滑化する拘束条件(Sekiguchi et al., 2000)を付加した。 平滑化の強さはABIC(Akaike, 1980)を基準に決定し、Vftwは残差を最小とするものを選んだ。

結果

図2に推定された最終すべり分布を示す。 図3に断層破壊の時間進展過程を示す。 図4に各小断層のでのモーメント時間関数を示す。 図5に観測波形と理論波形の比較を示す。 Vftwは4.0 km/s、最大すべり量は1.5 m、断層面全体での地震モーメントは1.3×1019 Nm(Mw 6.7)である。 破壊開始点付近の領域と破壊開始点から南東に約10 kmの領域において大きなすべりが見られる。 各領域の破壊時間は破壊開始から0.0-2.4秒と2.4-4.8秒と分離しており、各領域の破壊は両方ともdown-dip方向に進行したと考えられる。 また、各破壊領域からの理論波形を計算することによって、観測波形で見られる二つのパルスはそれぞれの破壊領域から生成された地震波によって構成されていることを確認している。

注:なお、本解析は暫定的なものであり、今後修正される可能性がある。
(文責:久保久彦、鈴木亘、青井真(防災科学技術研究所)、関口春子(京都大学防災研究所))

2017年2月28日改訂

以前の震源モデル(2015年5月15日公開)はこちらです。

fig1

図1:観測点分布及び断層面と最終すべり分布の地表投影。 赤三角がK-NET観測点、青三角がKiK-net観測点、緑三角がF-net観測点を示す。 星印は震央を示す。

fig2

図2:断層面上の最終すべり分布。 ベクトルは上盤のすべり方向とすべり量を示している。 星印は破壊開始点を示す。

fig3

図3:破壊の時間進展過程。 0.8秒ごとのすべり分布を地表投影している。

fig4

図4:各小断層でのモーメント時間関数。 星印は破壊開始点を示す。

fig5

図5:観測波形(黒線)と理論波形(赤線)の比較。 波形の右上にそれぞれの最大値を示す。