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9.3.2 地震動の上限



図9.3.2-1 1984年長野県西部地震の震源域と石の跳んだ地域[飯田(1985)による]


(a)


(b)


図9.3.2-2 跳び石の例.(a)20トンの巨石.(b)変位の測定例[伊藤ほか(1985)による]


図9.3.2-3 尾根の亀裂(梅田によるスケッチ)[伊藤ほか(1985)による]



図9.3.2-4 尾根と麓の余震記録[伊藤ほか(1985)による](a)観測点の位置と断面 (b)記録例

 媒質に破壊が生ずれば地震動の横波は伝わらなくなる。また、媒質のひずみは地動速度と波動の伝播速度との比で与えられ、この関係は周期によらない。歪みには破壊の限界値εcがある。したがって、地動速度に上限があり、その値はS波について

(9-8)  
となる。締め固められた土については、限界歪み, 横波速度β≒300m/secであるから、≒3m/secとなる。このような大速度はまだ地震計によって記録されていないが、震源地で石の跳んだ現象がいくつか見られ、それより3m/sec程度の値が推定されている。このような所では地面に亀裂も生じているので、この程度が強震動の上限と思われる。しかし地震計でこれを確かめるのは困難であるから、以下に跳び石の観察された例を詳しく示す。

 図9.3.2-1は1984年長野県西部地震の震源域(王滝)で石の跳んだ範囲を黒塗りおよび斜線で示した。黒塗りの部分の調査結果をまとめたものでは地表の石は例外なく跳んだ。図9.3.2-2(a) は約20tonの大石であり、図9.3.2-2(b) は跳んだ高さおよび距離を測定した例である。これより石の跳んだ初速度は上に265cm/sec,前方に151cm/secとなる。図9.3.2-3は尾根の亀裂であり、図9.3.2-4は尾根と麓での余震観測記録である。パルス性の波に対しても尾根は約0.2秒の周期で麓の3倍の振幅になるので、尾根にはゆれ易い固有の周期があるらしい。



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