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6.3 活断層と大地震の繰り返し



6.3.1 活断層の活動履歴



図6.3.1-1 断層トレンチの全景.糸魚川−静岡構造線松本盆地東縁断層の調査を目的として、大町市三日町地区で掘削されたもの.[提供:地質調査所活断層研究室]



図6.3.1-2 断層トレンチ断面の概念図(逆断層の場合)

 活断層の将来の活動を予測するためには、まず、過去の活動履歴を知る必要がある。これを目的として、地質・地形学的な方法を駆使した活断層の調査が行われている。

 最も代表的なのが「断層トレンチ調査」である(図6.3.1-1)。トレンチ調査では、活断層が通る場所を選んで地面を数メートル掘り下げる。面積は、普通、数m〜十数m四方程度である。こうして新鮮な断層面を露出させ、その両側の地層の食い違いを調べる。

 図6.3.1-2の概念図をご覧頂きたい。幾つかの地層が横線で区切られているが、当然、上方の地層ほど最近に堆積したものである。ここで、活断層の変位は時間とともに累積して行くことを思い出そう(6.1.1参照)。この変位の累積性のために、下方の古い時代ほど食い違いが大きくなっている。従って、各層が形成された年代が分かれば、その間の断層変位量から、活断層の平均変位速度を求めることができる。年代の推定には、地層中に含まれる生物遺骸の放射年代決定、年代の分かっている火山灰層の利用などの方法が用いられる。

 図では、断層の食い違いは第2層までで、第1層には及んでいない。これは、最新の断層変位が起きたのは第1層の堆積時期以前で、第2層の堆積時期以後であることを意味する。従って、両層の形成年代を調べることによって、この活断層の「最新活動時期」を知ることができる。

 図6.3.1-2で、第1層と第2層の間に「液状化」と記した層がある。新しい軟弱な地盤は、強い震動を受けると液状化を起こすことが多い(7.3.1参照)。断層のトレンチ調査、ボーリング調査からいろいろな深さで液状化の痕跡を捕らえることができれば、その年代測定結果に基づいて過去の大地震の発生履歴を詳しく知ることができる。ただし、液状化をもたらした大地震はその活断層から発生した地震とは限らないので、慎重な検討が必要である。



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