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5.3.2 複雑な断層破壊



図5.3.2-1 1995年兵庫県南部地震の
断層すべり量分布 [井出・他 (1996)による].☆印は本震の震源,小さい丸は余震を示す.

 実際の地震では、断層破壊の過程はきわめて複雑である。例えば、1995年兵庫県南部地震は、大局的に見て3つの地震(サブイベント)から構成されていた。第1のサブイベントが最も大きく、その断層長は淡路島北部から神戸市西部まで約25kmに達する。これに続いて北東側で第2、第3のサブイベントが発生した。このように、断層破壊は、急激な進行と停滞を交えながらぎくしゃくとした過程を辿った。

 1983年日本海中部地震(=7.7)の場合はもっと極端であった。この地震は2つのサブイベントからなるが、第1のサブイベントの断層破壊がほぼ終了した後、10数秒してから第2の破壊が始まった。震源断層の長さはそれぞれ60km、40km程度で、両者あわせて南北約100kmの断層破壊が生じた。

 このように、幾つかのサブイベントからなる地震を、「複合地震」または「マルチプルショック」と呼ぶ。実は、上に紹介した2つの地震は特殊な事例ではない。M7以上の大地震は、ほぼ例外なく複合地震の性質をもつ。

 震源断層面上では、最終的なすべり量も一様ではない。図5.3.2-1は、兵庫県南部地震の断層すべり量の分布を示したものである。断層面は垂直に近く、長さ約45km(北東—南西方向)、幅約20km(深さ方向)の広がりをもっている。断層すべり量は淡路島側で大きく、野島断層直下の浅部では2m以上に達する。野島断層では、地表にも断層ずれが現れた。

 一方、すべり量が大きい場所と地震波エネルギーを強く放射する場所は、必ずしも一致しない。例えば、断層破壊が急激に停止するときには、強い地震波が放射され、地震波形に「ストッピング・フェイズ」として現れる。こうした複雑な断層破壊過程を解明することは、強震動を予測する上でも重要な意味をもっている。


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