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4.3 初動の押し引き分布と発震機構



4.3.1 初動の押し引き分布



図4.3.1-1 1931年西埼玉地震(M=6.9)のP波初動押し引き分布[阿部勝征(1990)による]

 地震波のP波は、押し波で始まる場合と引き波で始まる場合の両方がある。しかも、地震ごとにどちらかに決まっているのではなく、同じ地震に対して、押し波の観測点と引き波の観測点があらわれる。ここで、押し波は震源から観測点に向かう方向の振動で、地表では上向きの変位となる。引き波はその逆である。

 図4.3.1-1に、P波初動の押し引き分布の一例を示す。●が押し、○が引きの観測点である。震央の位置は+印で示されている。この図から、押し引きの分布はでたらめではなく、きれいに4象限に分かれていることがわかる。押しと引きの領域を分ける直線を「節線」という。2本の節線の交点が震央の位置である。

 かつては、地下でマグマが爆発して地震となるという考えがあった。もしこれが正しければ、震源からはあらゆる方向にまず押し波が出て行くことになる。従って、全観測点で初動は押し波となるはずである。逆に、地下の空洞がつぶれて地震になるのならば、全観測点で引きにならなければならない。実際の押し引き分布からは、このような単純な震源像は排除される。

 次ページで述べるように、岩盤がずれ動く断層破壊を考えることによって、この4象限型の押し引き分布を完全に理解することができる。2つの節線のうち一方がこの断層面と一致する。



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